骨粗しょう症やがんのお薬と歯科治療の関係
骨粗しょう症は女性に多いとされ、高齢の場合には転倒による骨折につながりやすいため予防として薬を服用している方も増えているようです。
骨粗しょう症の治療薬の中でも「ビスフォスフォネート製剤(BP薬)」は、抜歯などの歯科治療に影響することがあり注意が必要ですので、こちらで詳しく紹介いたします。
骨粗しょう症・がんの治療薬(ビスフォスフォネート製剤)について
治療を受けにいらっしゃる患者様の中には、様々なご病気の治療で薬を服薬している方が多くいらっしゃいますが、中でも特に歯科治療を受ける際に注意が必要とされているのが「骨粗しょう症」と「がん」の治療を受けられている方です。
こちらではまず、骨粗しょう症が一体どんなものなのか、そしてその治療薬として使われている「ビスフォスフォネート製剤」という薬について簡単に説明いたします。
~まずは骨粗しょう症について~
骨粗しょう症とは、骨の強度が低下して、骨折しやすくなる骨の病気です。
骨粗しょう症になると骨がもろくなり、転びそうになって手をついたり、くしゃみなどの日常にある小さな衝撃でも骨折してしまうことも。
脚や背骨の骨折から自力での歩行が困難となり、寝たきりになってしまうリスクが非常に高い病気です。
発症初期は痛みなどの自覚症状がほとんどなく、腰痛や背中の痛みなどから発見される場合がほとんどです。
~ビスフォスフォネート製剤とは?~
ビスフォスフォネート製剤は、骨の密度向上のため、骨粗しょう症に対しては予防・治療として、がんに対しては骨転移、多発性骨髄腫などの治療に使われる事が非常に多い薬です。
飲み薬と注射薬の2種類がありますが、骨粗しょう症の治療では一般的に飲み薬が使用されています。
歯科治療の何が影響を与えるのか
骨粗しょう症の治療薬であるビスフォスフォネート製剤は、骨吸収を抑え骨密度を増やす効果があり骨の強化が期待できます。
しかし近年、ビスフォスフォネート製剤の服用中、もしくは服用歴のある方が外科的処置・治療が必要となる抜歯やインプラント、歯周病の治療などで「顎骨に刺激が加わる治療」を受けることにより「顎骨骨髄炎」や「顎骨壊死」が発生するリスクが高いことがわかってきています。
海外からの報告では、
*骨粗しょう症でビスフォスフォネート製剤の服用している方
=1000人中1~3人
*がん治療でビスフォスフォネート製剤の注射を受けている方
=100人中6~9人
もの方に歯科治療が原因となり顎骨壊死が生じたと報告されています。
なお、日本口腔外科のガイドラインででは、
・直接骨損傷を伴うような抜歯等の侵襲的歯科処置は避け、できれば、最も非外科的の歯科治療が推奨される
・回復不能な歯は歯冠の削除(削合)と残存歯根の歯内処置により治療する
・強力な注射用ビスフォスフォネート製剤を頻回な投与スケジュール(年4~12回)で使用しているがんの患者様には歯科インプラント治療は行うべきではない
と示されています。
顎骨が壊死した場合、歯茎の腫れ・激痛・排膿・顎骨の露出などが生じ、一度発症してしまうと回復は極めて難しい病気です。
ビスフォスフォネート製剤を服用している、もしくは服用していた時期がある方が歯科治療を受ける際には必ず医師にお伝えいただく事が重要です。
気を付ける点は?
骨粗しょう症を発症している方は、腕や脚、背~腰の骨だけではなく、歯を支えている顎の骨の強度も弱くなっていますので、骨粗しょう症にかかっていない方に比べ虫歯や歯周病の進行が非常に危険なものとなります。
こちらでは、ビスフォスフォネート製剤を使用している方が実際に歯科治療を受ける際にお気を付けいただきたい大事なポイントをお伝えいたします。
【歯科医師に「骨粗しょう症(またはがん等)で薬を飲んでいる」「骨を強くする薬を飲んでいる」ことを必ずお伝えください】
初診時には問診表で「現在治療している病気」や「飲んでいるお薬」などを申告いただくことがあると思います。
『骨粗しょう症だけど症状も軽いし…』などと判断なさらず、必ず記入いただくようお気をつけください。
また、もし歯科治療が始まってからビスフォスフォネート製剤を服用しはじめた際には、担当歯科医師に早めにご報告いただくことを忘れないようにしてください。
せっかくの歯科治療が「顎骨壊死」という深刻な症状を招くことのないようご注意ください。
また、併せて知っておいていただきたいのが
【ビスフォスフォネート製剤を服用している(していた)方はより一層、虫歯や歯周病などの予防がたいせつ】
ということです。
ビスフォスフォネート製剤を使用していても、歯石除去や抜歯を伴わない虫歯治療、入れ歯の調整などの一般的な処置は可能ですが、やはり「顎骨壊死」のリスクを抑えるためには極力歯科治療が必要ない健康な状態を維持することが一番です。
ご自身で行っていただける予防策としては、
・毎食後にブラッシングをしっかり行う
・歯周病を悪化させる生活習慣の改善(喫煙、偏った食生活、ストレス)
といったものがあります。
上記に加え、「かかりつけ歯科医で定期的な健診」を受けることでより安心いただけるのではないでしょうか。
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